天皇(昭和)を戦争犯罪人にしなかった背景
- 2005/06/21
- 13:52
さて、第二次世界大戦中のアメリカの兵士用教育素材、[jap soldier]小冊子からの最後の記事である。
この小冊子はインファントリージャーナル社が発刊して、かなり高い25セント(現在の物価なら20ドルくらい)で販売していた。推察するに軍事の専門家と言うより、タイムライフ誌など日本に1930年代取材した記者と政府の人間が執筆していたようだ。
「日本の将校」と言う記事。
写真は、中国戦線の野戦の中隊長クラスと小隊長が乗馬し、その後に歩兵小隊が続いている。
野戦の将校だから実務派で政治的な背景があったようには考えられないしこの中、小隊長からはどうしてもそのような印象は受けない。普通の軍人だ。
記事は政治的だ。その中に「日本の天皇に戦争責任がない」、と感じられる文章がある。
「記事内容は
「日本の将校は自分自身を征服者と映す。征服した者を屈服させる。彼らに論理や倫理は問題外だ。
野心のみがある。日本は不滅である、戦争に負けたことがないから、と思っている。
彼らは世界の誰よりも優れていると信じている。
将校は位が上がれば上がるほど、残酷で、一方的だ。
多くの将軍や元帥は、秘密結社「黒竜会」に属している。この「黒竜会」が1936年のクーデターも
企てた背景だ。東条も会員で、全軍を戦争に駆り立てている。彼らは天皇へ会うことが出来る。
天皇も今は彼らの奴隷である。(言いなりである。) その後、将校の位の階級章の見分け方が説明されているが、-略ー。」
「黒竜会」は20世紀初頭、内田 良平と言う人が創設した実在の右翼団体で、欧米に対抗する意味での
「大アジア主義」を唱えた。1931年には大日本生産党という組織になった。テロも行った。
だが私は日本の将軍や元帥などの重鎮の多くが、「黒竜会」会員であったと言う事実は認識していない。
思想に共鳴したとか、同じ思想であった可能性はあるが、秘密結社として組織化されていたかどうかは事実として疑わしい。
大アジア主義は「大東亜共栄圏」思想に発展したと言われている。
しかし、アメリカ側に、戦中、すでに、同団体(もしくは軍部が)が天皇を操っており、天皇には実権がなかったと言う見方をしていたとした事実は大変興味深い。
勿論、昭和天皇が実際に権力を行使してなければ責任も発生しないという解釈は欧米的合理性に合致して、マッカーサー最高司令官の判断を待つまでもなく昭和天皇には戦争責任はなかった。
また戦争責任を「黒竜会」と言う秘密結社のせいにするのも合理的ではないが。