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「空白の沖縄戦記」 森 杉多著


この本は昭和50年10月、昭和出版刊。
沖縄戦が終結し、60年。もう一度この本を読み返してみた。
戦後、沖縄戦のみならず、ありとあらゆる戦記もの、兵器もの、その他戦争に関する出版物が発刊された。中には自分の手柄だけを強調したり、論理的に合わない記述が多かったり、一体何を言っているのか
支離滅裂なものまで、玉石混交であった。
その中から、終戦60周年に掛けて、私が読んでみて、著者が真剣に戦争の現実と対面し、戦争の悲劇、異常、非合理を後に伝えたいと言う緊迫感が強く表現されていた作品を幾つか紹介したい。

森 杉多氏は1915年生まれ、終戦の年には30歳であった。鹿児島県生まれで、東京高等師範学校を卒業し、応召され、通信兵として無線機操作を訓練された。1939年、第6師団、第45連隊所属でノモンハン戦に参加した。1941年除隊し、東京文理科大学に進み、第一高等女学校に勤務した。
1944年9月再応召され、沖縄本島、本部半島の陣地で守りに付いていた。

本は1945年3月25日のアメリカ軍の沖縄上陸、戦闘、敗走、逃避、住民との摩擦、そして、沖縄本島からの脱出。脱出後、沖永良部島、与論島、徳之島での日本軍や住民からの扱い。再び沖縄本島へ侵入せよとの命令。そして終戦。復員。などの話を淡々と表現しているが表現力があり、会話を上手く取り入れて臨場感がある作品であった。恐らく書かれていた内容は全て事実であっただろう。

通信兵だったので、洞窟陣地では無線機のコイルを巻き替えて、アメリカの放送を傍受したり、山の上から特攻機の攻撃を目撃していた。4月6日伊江島上空から、アメリカ海軍重巡クラス大型艦が、攻撃を受け一瞬にして轟沈した様子を目撃した。

逃避の中で、住民がどういう過程で戦闘に巻き込まれ、犠牲になったか、の状況が詳しくあった。また虚偽の申告によって逃走しようとする将兵など、仲間割れ、負け戦、敗残の実態がよく書かれていた。
左翼の反戦理論言を聞く前にこういうまじめな本を読んでみることを薦める。

森 杉多先生は、練馬高校校長を最後に教員生活を終われた。10年くらい前手紙を出したが返事はなかった。存命なら今年90歳だ。本を読んでみると氏の人格、性格もよく理解できる。

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プロフィール

Shigeo Sugawa

Author:Shigeo Sugawa
日本の武器兵器史の研究者、陸上自衛隊武器学校資料館アドバイザー。
目まぐるしく変化する国際情勢、その中で日本が対応する未来への策、安全保障を政治、経済、社会、報道などを多角的に分析する。
また趣味の狩猟、渓流釣りと自然、環境問題。そしてアート、音楽、歴史など文化面をも・・・その思うところを紹介したい。


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