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「私の中の日本軍」 山本 七平著


山本 七平氏が存命だったら、現在の日本の近隣諸国との関係、小泉君の施策、及び日本の報道などをどのように分析するか。山本氏ほど、日本軍の現実と「報道の虚偽」に関して厳しい意見を述べていた方はいなかった。私は山本氏は「今の日本の近隣諸国の言いがかりのような歴史観」を突き放すような態度に拍手喝采し、それを批判する報道を「欺瞞」決め付けると想像するが。
歴史は事実であり、現実として妥協すべきものではない。だから、日本人が自国の歴史を60年間ないがしろにしていたことを、近隣諸国は良く知っていて、突いてきているのだ。

本の中で、「南京百人切り」は日本の報道機関が「でっち上げ」たことで、事実ではあり得ないことを、軍の組織論からかなりの枚数を費やして述べていた。

「私の中の日本軍」は山本氏が文化人、知識人、執筆家として一流であっただけに説得力があり優れた歴史書、文化書である。
歴史を勉強する人なら一度は読んでみてもらいたい本だ。

山本氏は1921年生まれ、クリスチャン、1942年青山学院大学を卒業し砲兵隊に入隊。1944年ルソン島に砲兵将校として、配属され、戦中、戦後苦難を味わい、戦犯の疑いも掛けられつつも1947年に帰国し、山本書店を設立して、各種の文化作品を残した。
イザヤ・ベンタサン名で「日本人とユダヤ人」を「週間新潮」誌に掲載、「日本人の人生観」「日本教徒」などの作品がある。1991年没。

「私の中の日本軍」は単に軍の非合理を批判するのではない、日本軍は「日本そのもの」であり、その根底的性格は現代にも変らずに存在すると言う観点で、書かれていた。

戦場の「定め」「常識」「扇動記事と専門家の意識」「戦争伝説の仮面を剥ぎ取り軍隊神話の源流を探求する」とあるが、実は彼自身の軍隊での失敗談や、実戦の話など、具体的な描写も多い。
自分の判断誤りで、部下を戦死させた罪悪感に悩まされる。塩缶一杯で原住民を徴用したことを戦後責められる。しかし塩缶一杯は現実であったのだ。内陸の原住民には一日働いて得る相応のものだったのだ。
それの事実は別な世界にいては判断できぬ。
日本は戦争をアメリカの物量に負けたのでなく、物量の考え方に負けたと言う論理など、なるほどと思うことばかりだ。

日本人は合理的ならなければならない。形は近代国家だが人間の心はストリーから入る感情的なコミュニケーションに支配されている。歴史問題は特にその傾向が強い。歴史は済んでしまったことであり、良い、悪いはすでにある時点で区切りでつけてある。(例えばサンフランシスコ条約)
日本が論理を優先する欧米的な体質なら、政府は近隣諸国の歴史クレームに「そんなことはサンフランシスコ条約を読んでくれ」と言ってピリオッドだ。

日本のメディアは戦争中は戦争中で過大な成果を書き上げ、国民を戦争に駆り立てたが、今は今で同じ
ように自国の過去を過大に卑下していると言うのが彼の指摘であった。そいいう理論で言えば現在の
反日運動の源は日本の某新聞社にあると言っても過言でない。

ルソン島で、ゲリラに対して、アメリカ軍から鹵獲した車載砲の指揮をとり発射する。ヤードとメーターを間違えて距離を合わせてしまうが、怪我の功名でゲリラを撃退すると言う話もあった。

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プロフィール

Shigeo Sugawa

Author:Shigeo Sugawa
日本の武器兵器史の研究者、陸上自衛隊武器学校資料館アドバイザー。
目まぐるしく変化する国際情勢、その中で日本が対応する未来への策、安全保障を政治、経済、社会、報道などを多角的に分析する。
また趣味の狩猟、渓流釣りと自然、環境問題。そしてアート、音楽、歴史など文化面をも・・・その思うところを紹介したい。


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