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Shots Fired in Anger(怒りの銃弾)



この本は、欧米の日本軍と日本軍兵器研究者のバイブル的な存在だ。

著者のジョン・ジョージ中佐はガダルカナル、ビルマで日本軍と戦って、日本軍の闘い方、兵器を研究し、535ページにも及ぶハードカバー本を書き上げた。
戦争中の著作なので、日本軍に対する怒り、憎しみ、偏見の記述があるのは否めない。
しかし、兵器そのものに関しては客観的に観察し、評価している。
日本の戦争、日本軍、将校、兵士、兵器などを研究するなら、相手方の書いたものも読んでみることだ。
翻訳されてないものが多いので、英語で読まなければならない難点はあるが。

彼はこの本の中で写真を使わず、日本軍捕虜の画家にイラストを描かせ、それらを説明に使っていた。
そのイラストは、兵器だけでなく、日本兵が兵器を扱う様子、戦場での生活など多種にわたり挿入していた。

ジョン・ジョージ中佐の戦場での役目は何だったのか。どうも良く分からないが、部下を率いて闘ったというよりは、インテリジェンス(情報)系の役目だったようだ。
つまり、戦闘部隊に同行して、日本軍との戦闘に参加、鹵獲した兵器を収集し、捕虜の聞き取りをする、
その結果を本国のしかるべきところに報告していたのではないかと推察する。

兵器は主に小火器系であって、それらを日本軍が使用している様子をイラストに描かせているのは、
私のような研究者にも大いに役にたった。
例えば、狙撃銃。九七式狙撃銃と眼鏡の箱入りを海岸で鹵獲した。眼鏡に調整機能がないことに気がつく。これは別な銃の眼鏡は使えないことを意味する。また狙撃兵が偽装して、椰子の木に登りアメリカ軍将校を撃つ。九七式狙撃銃に使用された6.5mm弾は煙がすくない。
日本兵は射撃で、負い皮(スリング)を腕に絡めない。そんなことをしても時間の無駄と知っているからだ。銃剣を研いで、ナイフのようにする、こんなシャープな銃剣はない。

日本兵のしゃがみ撃ち。これは古式射法からとったものだが、「ニッポニーズしゃがみ撃ち」アメリカ兵の筋肉では無理だとしてある。

九六式、九九式軽機関銃の銃の上に立つ弾倉(チェコ、ブレン系と同じ)を批判している。
射手の視界を遮ると。BARのように下に弾倉がついておればよいと。確かに現代の軍用銃には弾倉が上に立つ方式はもうない。しかし、両目を開けておけば、弾倉はその真ん中にあるので、視界は遮ってないが。

とにかくこの本は細かいところ、日本兵の気質にまで触れた詳細で、正確な記録である。
今までの日本人は戦争や戦闘の事実を知らされてないから、近隣諸国の歴史認識の非難をそのまま取り入れ、右往左往してきた。日本人は、
もっと細かいことも勉強して、自分自身の知識に自信をつけなければならない。
そのためにはこの本のように客観的に書かれた事実を知ることは重要だ。

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プロフィール

Shigeo Sugawa

Author:Shigeo Sugawa
日本の武器兵器史の研究者、陸上自衛隊武器学校資料館アドバイザー。
目まぐるしく変化する国際情勢、その中で日本が対応する未来への策、安全保障を政治、経済、社会、報道などを多角的に分析する。
また趣味の狩猟、渓流釣りと自然、環境問題。そしてアート、音楽、歴史など文化面をも・・・その思うところを紹介したい。


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