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火縄銃弾丸は鎧で防げる。


某国立博物館の学者が書いた本の記述である。
16世紀半ば、日本の戦闘に火縄銃が使われ始めると、鎧に変化があった。これは事実だ。
その新しい鎧は火縄銃の弾丸を防ぐために厚い鉄製のものが採用された。と言うような内容だ。

火縄銃射撃をしてみると、その威力は距離にもよるが侮れぬ。100mくらいであると3-5mmの
鉄板は軽く打ち抜いてしまう。弾丸の鉛は柔らかいから鉄板は打ち抜けることができない、これも間違いだ。球形の弾丸は鉄板に当たると、平たく変形するが、そのまま大きな穴をあける。

日本でこれを実験をすることは不可能だ。
日本の銃刀法では火縄銃は所定の射撃場で標的を撃つ競技、およびその練習だけに許可されている。
従って、山の中に鉄板なり鎧を持って行って、人のいないところで撃つなどと言うのは違法だ。

アメリカでは射撃場の許可があれば、可能であり、射撃クラブの管理者は快く承認してくれた。
画像は私がアメリカの射撃場で50mの距離から10mm口径の日本の火縄銃で射撃した日本の鎧に空いた穴だ。表の穴は裏にも突き抜けて、裏の穴は弾丸が変形していたので、もっと大きかった。


従って、鎧を着用していても、火縄銃の前には無力だ。
50mと言うのは微妙な距離で、もしこの1発を外すと、次の装填に20秒掛かる。この間に刀をかざした相手が突貫してくれば、火縄銃では間に合わない。射手も刀を抜いて戦闘しなければならぬ。

火縄銃の有効射程距離は、各地のお城の堀の幅だ。堀に近づいたら、城からの発砲で倒された。

歴史の研究は実物をよく観察して、実験し、実証の積み重ねだ。一度本に書いてしまうと(私にも
間違いは沢山あったが)、読者には真実になってしまう。
活字の恐ろしさだ。

なおこの実験で「貴重な鎧を壊してしまいけしからん」と関西の大先生にお叱りを受けたが、日本に健全な鎧甲冑はまだ沢山ある。
実際に撃たれて穴の開いた鎧のほうが貴重ではないかと私は思う。

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コメント

No title

>歴史の研究は実物をよく観察して、実験し、実証の積み重ねだ。 所謂、歴史家は「=文献史家」で実験・実証などしない。ほぼ「資料の虫」でしょうね。某国立博物館は個人蔵の蒐集品の一括寄贈を受けてから、銃砲史に積極的に発言するようになった。銃砲史を盛り立ててくれるリーダーとなるのは、それはそれで歓迎したい。来月には佐倉で特別展示を開催するそうです。 ところで、現存する「試し胴」には貫通したものは無い。あえて貫通しないような条件を整えた「ヤラセ」だったのでしょうか?

No title

「試胴」といわれる、少し凹んだものは、火薬の量を減らして、鎧を作った職人の顔を立て、かつ鎧を着用するものに自信を与える、一種の「儀式」と私は理解してます。それを真に受けてる「学者」「学芸員」がいるのはお笑いです。佐倉の展示物は今まで複製が多かったので、期待はしたい。

No title

私は、学者や学芸員というのは(現実とは無関係に生息している)隠者にすぎないと考えています。隠者が大学という世間と関わりがない空想の塔から出てくると、(あまりに不思議な存在なので)世間が注目しますが、不思議な存在だから「真実」を把握しているわけではないのです。この実験と記事、たいへんおもしろいと思います。

No title

ありがとうございます。学者、学芸員ほどモノを知らない人種はいない、 されど何となく必要。もっと専門外にも勉強の時間をついやせば、案外 自分の専門も深くなるのではないでしょうか。これはどんな職でも。

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プロフィール

Shigeo Sugawa

Author:Shigeo Sugawa
日本の武器兵器史の研究者、陸上自衛隊武器学校資料館アドバイザー。
目まぐるしく変化する国際情勢、その中で日本が対応する未来への策、安全保障を政治、経済、社会、報道などを多角的に分析する。
また趣味の狩猟、渓流釣りと自然、環境問題。そしてアート、音楽、歴史など文化面をも・・・その思うところを紹介したい。


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