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イーストウッドの挑戦 「父親達の星条旗」 戦争映画100選


アーリントン墓地の最大の目玉は、星条旗を硫黄島擂鉢山頂上に立ち上げた数名の兵士達のモニュメントだ。
イーストウッドは愛国者であり、アメリカの歴史を疑っていない人間だと思っていた。
この映画「Flags of our Fathers]は、戦争映画の最新作だが、そのテーマはこの星条旗を掲げた兵士と
それを活用した政府高官に対する「疑問」と「批判」である。

共和党員のクリント・イーストウッドは、ルーズベルトや背の低いトルーマンを良くは描いてない。
(彼らは民主党。民主党は1930年代も今も日本には厳しい。)

しかし、この映画が、アメリカ最大モニュメントとなった兵士達がそれに直接関与してなかった兵や、違う人間だったり、また国債募集の馬鹿げたイベントに使われてしまったこと、そして真の戦争英雄観は異なるのではないか、と言う今までのアメリカ史に対する挑戦だと感じた。

主役の3人は適役だ。良い役者ばかりだ。アルコール依存症で死んだネイティブアメリカンのアイラ役は
太ってしまったが、「ウインドトーカーズ」の主役だった。無謀で使いものにならなかったニュージャージィー州出身の兵士レイニー・ギャグノンは最初の現場にいなかったのに、取り替える旗を運んだ。最初に鉄管に結びつけ立ち上げた兵士達がその後戦死してしまったので、彼らの代役になった。
分隊を指揮したストランク軍曹は味方の誤射で戦死した。(「硫黄島の砂」のジョン・ウエィンの役。)

この映画はしかしながら、硫黄島の戦闘が実際どんなものであったのか、それは良く描いてない。
まずは日本側が殆ど全員戦死、アメリカ側もあまりにも犠牲が多かったから、白兵戦闘が主体だったのか、夜間戦闘がどうだったのか、不明な部分が多かったからだろう。日本兵はほとんど出てこない。
(弾が無くなり洞窟で手榴弾で自決した日本軍将兵。機関銃弾倉入れが空でちらばっていた。しかし日本軍の機関銃の発射音が違ってた。重機はドン・ドン・ドンと言う低い音で、軽機はガン・ガン・ガンという迫力のある音なのだ。また海軍の25mm機関銃とか金属探知に掛からない陶器製地雷がアメリカ軍に大きな被害を与えたはずだが、それらも出てなかった。)

実際、戦記ではアメリカ軍は上陸地点犠牲が多かったとのことだ。そのように描いてない。(日本側は限られた上陸地点に遠くからあらゆる火器の照準を合わせてあったと言われてた。)
「メデック」衛生兵を海兵隊は「コープスマン」(コープ自体が海兵隊と言う意味)呼んでいたようだ。
映画の字幕誤訳は沢山あったが、そんなことはどうでもよい。
残念なのは編集が良くない。特にストリーがブラッドリー衛生兵の息子の聞き取りと、ナレーションで進行していくことが、最後まで観客にはよく理解できない点だ。

アメリカ軍は最新の医療設備を備えた病院船を数多く沿岸に用意していたので1万人の負傷者は障害者となっても生き残れた。(日本軍はそのような設備は皆無だったので負傷者は洞窟で皆死んだ。)

戦死した1万人のアメリカ兵の平均年齢が19歳と聞いて、75歳のイーストウッドは考えるところがあったのだろう。
日本国、東京都、小笠原の硫黄島はまだいろいろな物語が続きそうだ。

しかし残念ながらこの映画は、本国アメリカでも日本でも当たらないと私は思う。

イーストウッドに「リンカーンと南北戦争」と言う映画を製作してもらいたい。リンカーン大統領の役は自分でできるだろう。

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プロフィール

Shigeo Sugawa

Author:Shigeo Sugawa
日本の武器兵器史の研究者、陸上自衛隊武器学校資料館アドバイザー。
目まぐるしく変化する国際情勢、その中で日本が対応する未来への策、安全保障を政治、経済、社会、報道などを多角的に分析する。
また趣味の狩猟、渓流釣りと自然、環境問題。そしてアート、音楽、歴史など文化面をも・・・その思うところを紹介したい。


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